Horace M Miller 先生の移植の論文を読み解く
投稿日:2016年7月29日
カテゴリ:根管治療(歯の神経の治療)
移植についての論文って、あんまりよんだことがなかったんで、代表的なものだけでも目を通したいと思い、ミラー先生の『Transplantation And Reimprantation Of Teeth』という文献を読んでみました。
私が思うに、日本は移植大国ではないかと思います。
保険で出来ちゃうなんて、諸外国どこにもないと思います。
日本で、こんなに移植がメジャーなのは救歯会の先生方の影響が色濃くでているからではないかと思っています。黒田先生は卒後間もない頃の私のアイドルでした。
まずこの論文の構成
1、今までにどんな移植に関する文献があるか
2、テクニック
3、ケースレポート
4、歴代の調査
5、コンクルージョン
という流れになっているのですが、1をざっと読むと
メルボルン大学で犬の歯を移植する実験をした比較的良好な結果だった。
Burgoyne先生は人で歯の移植を成功させた
Exner先生は前歯部で外傷で抜けた歯を再植してうまくいった
Robert Bradlaw先生は歯を豚のお尻や、鶏のとさかで生着させた(!?笑)
・・・
みたいな、ことがずらずら書いてあります。
全部、ふわっとしていて、なんだかな。昔の論文ってこんな感じなんですかね笑
この文献の移植の定義は発育中の上下親知らずを6番に抜歯と同時に移植することと定義づけております。
そして術後、6~8か月で、歯根は成長し、噛めるようになりますと書いてあります。なんだか、エビデンスとかより、ふわっと筆者の経験談みたいな感じが面白いです。
大昔の文献では人→人へ、歯のいしょくが行われていたとも書いてありまして、梅毒が大流行して、すたれたと書いてあります。(嘘みたいですね笑)
テクニックを読んでいくと、
一番最初に、Fig1を見て下さい。移植にベストな歯です。って書いてあってですね、Fig1を見ると
こうゆう感じの歯がベストだそうです笑(Type Of Tooth Best Suited Transplantation)
なんか、もっと、移植に向いている何かをまとめた表みたいなのを期待していたのに・・・笑
まとめると
完全埋伏歯である。
根未完成である
傷つけない
乾燥させない
というのが大事だそうです。テクニックといいつつ、具体的な抜き方みたいなのは書いてありませんでした。
で、ここまで読むと急にケースレポートが始まります。
ケース1はFig2で、 『遠心根が吸収しました、抜歯の時に傷つけちゃったみたい。患者さんがWisconsinに引っ越して、今は連絡取ってない』だそうです
ケース2はFig3で、『11歳の少年に移植しましたが、歯根が出来ませんでした。このケースは歯冠が形成されてから移植しないとうまくいかない事をものがったてます』とのこと。見るも無残ですね。
因みに、院長は学生の頃、MUZAN(無残)というバンドをやっていました。メンバー全員、トイレットペーパーで全身を覆うという、斬新なイデタチでしたが、ライブが終盤になり、汗をかくと、トイレットペーパーが溶けてきて、すごく無残な事になるという伝説のバンドでした。ミイラ男を意識していたんです。
ケース3はFig4で、移植後4年後のレントゲンだそうです。『P根は成長した。MB、BD根は成長が遅れを取っています』だそうです。いや、これはもうMB、BDは成長遅れてるんじゃなくて、成長しないんじゃない?笑
因みにEPTはポジティブとの事!!歯髄って不思議ですね。
ケース4はFig5で、『近心に年々ポケットができてきました』とのこと。原因は書いて無いです。
ケース5はFig6で『ランパンドカリエスで、入れ歯になって、でも、移植歯は鈎歯には使えませんでした』とのことです。なんのこっちゃ。
ケース7以降はうまくいってる症例が出てます。
つまらないので、Histologic Investigationを読みます
移植後に第二象牙質が出来ている。
移植後に象牙細胞がちゃんと象牙質になるという証拠になってますとのこと。
あまりうまくいかないと、象牙質じゃなく、骨みたくなります
みたいなことが書いてあります。
Summary
1948年に38本の移植を行い、25本の再植を行った。
移植歯のうち、20本(52%)はまだ、患者の口のなかで経過良好です。
9本(24%)は抜けたか、抜いた。
9本はまだ残っているが、外部吸収が激しく、ダメになりそう
これらの失敗はほとんどが、ケースの見極めを誤っている。具体的には、歯冠が完成してないものがダメになっていたり、でかすぎる親知らずを移植してしまっている。
みたいなことが書いてありました
Conclusion
!~8までいろいろ書いてありますが、
7に再植歯で、30年予後の歯があるが5年以内に抜けることもある
8に『We don`t know ,as yet,enough about transplanting or reimplantation and are just beginning to learn.』というのがありました。 これは感慨深い。
この文献は1956年のもので、近代歯内療法が確立される以前のものなんですね。
根未完成歯は歯髄が再生しますので、このころは、私がよく行っている、移植→根管治療→補綴 というのがあまり一般的じゃなかったんでしょう。
ミラー先生が今の歯科治療を見たらきっと感動するんでしょうね
最後までお付き合いありがとうございました。良い週末を
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